PNC「日本代表vsトンガ代表」レポート

 

パシフィックネーションズカップ「日本代表vsトンガ代表」試合レポート

パシフィックネーションズカップ「日本代表vsトンガ代表」試合レポート
 
W杯開幕まで48日となった8月3日(土)。
西の聖地、東大阪市花園ラグビー場においてPNC日本ラウンド第2戦が行われた。鮮やかな芝の色は、手入れが行き届いていることはもちろん、W杯仕様で光量が増した照明に照らされているからでもある。
ボランティアの対応やタイムスケジュールまで、本番同様の進行がなされ、入場券も売り切れるという、舞台として十分な環境が整った中、仮想サモアのトンガを迎えたブレイブブロッサム。
リーダー陣の一人として、そして先発出場をした荒尾高校(現・岱志高校)出身スクラムハーフ(SH) 流大(ながれ ゆたか)選手に注目して試合を振り返る。
 
レポート:熊本県ラグビーフットボール協会 広報委員会 花野剛一
写真:熊本県ラグビーフットボール協会 広報委員会 宮本浩光
 
 
試合開始1時間半前、JPN広報から、「チームとしてメディアに発表したいことがある」と、メディアルームに藤井雄一郎強化副委員長があらわれた。
「昨晩、ジョセフHCのお母さんが亡くなったとのこと。本人はこの試合の指揮を執ると発言したが、選手・チームスタッフから、お母様の所に行ってあげてとジョセフHCを送り出した。」
ということだった。そして試合の指揮は、トニー・ブラウンコーチがとることが告げられた。ブラウンコーチは、「ジョセフHCにグッドニュースを届けよう」とチームを鼓舞し、
先週フィジーに勝利した試合よりももっといい試合をするように、と課題を出した。
 
日が暮れ、新たに設置された照明がグラウンドをくっきりと浮かび上がらせる時間になっても、蒸し暑さは依然として続いていた。ほぼ無風状態のスタジアム内は体感で30℃を超え、選手にとっては厳しいコンディションの中、選手入場。
国歌斉唱の後、トンガのウォークライであるシピタウが静寂の中に響く。
 
19時11分。前回大会、JPNが劇的勝利を収めた南アフリカ戦の笛を吹いていたガルセス レフェリーの笛が吹かれ、JPNのキックオフで試合が始まった。
 
 
前半4分 JPN
WTB松島が、相手ボールを故意にはたいて落とすペナルティを取られシンビン。10分の退場。JPNは一人少ない14人となる直後、一人BKが足りない状況を見てトンガSOフォシタが無人のインゴールへキックパス。しかし、WTBはボールを抑えることが出来ず、JPNは危機を逃れる。
 
トンガは前に飛び出すディフェンスで、プレッシャーをかけてくる。
アタックでは個々の強さを生かしてFWが縦に突進。
しかしJPNも下がることなく、ダブルタックルで前で食い止める。
 
前半6分 JPN
相手ボールを奪いカウンターを仕掛ける。パスでの展開やキックパスで22m内まで攻め込む。ペナルティを得ると、ゴールは狙わずラインアウトを選択。
 
前半10分 JPN
左ゴール前5mのラインアウトからモールを作り前進。トンガの激しいDFをものともせず、NO.8マフィが押さえてトライ。田村のゴール成功で7-0。
 
前半12分 トンガ
ラインアウトが乱れボールを確保できない。
 
前半14分 JP
シンビンで一時退場していた松島がフィールドに戻る。この時間、トンガに得点を与えず、逆にトライを取ったことは相手を調子に乗らせることなく試合をマネージメントできていたといえる。
 
前半17分 JPN
自陣22m内フェアキャッチから意表をついて展開。長短織り交ぜたパスとランニングコースに変化をつけ、相手ゴール前へ迫る。
           
前半20分 JPN
相手ゴール前に攻め込み、FWで連続攻撃、インゴールに迫る。最後はPRヴァルアサエリが持ち込んでトライ。田村のゴールも成功し、14-0。
 
前半22分 ウォーターブレイク。
ここまで、JPNは自陣からも仕掛け、積極的にボールをつないでいる。トンガのタックルミスはこの時点で16。JPNの3と比べて、フェーズを重ねられるとモロいことが露呈して来た。そしてここから、SH流はキックを攻撃に織り交ぜ始めた。
 
流)もともとのプランではタッチに出さずに、ボールをフィールド内に落としてアンストラクチャーの状態を作る予定だったんですが、前半の前半で、トンガのラインアウトが安定していないと分かったんです。
それと、味方のプレッシャーが素晴らしくて、ディフェンスもしっかり機能していたので、僕からチーム対して、相手ボールになっていいからタッチに出るようなキックをするから、そのあと、しっかり相手にプレッシャーをかけていいディフェンスをしようと提案しました。
 
前半23分 JPN
SO田村は相手BKラインの頭を越えるキックで陣地を稼ぐ。
 
前半25分 トンガ
JPN22m付近のラインアウトを確保できず。
 
前半27分 JPN
ラインアウトから展開するも相手ディフェンスの圧力が強いと見るや、SH流が裏のスペースへキックでタッチへ。トンガゴール前5mに迫る。
 
前半30分 JPN
相手ゴール前5mスクラムからFWで連続して押し込み、最後はSH流からボールを受けたSO田村がフェイントをかけたパスを右サイドのCTBラファエレにつなぎ、余った状態となり中央へ回り込んでトライ。田村、ゴール成功。21-0。
 
JPN 相手ディフェンスの出方を見てはパスで外へ展開、キックで陣地を選択と、臨機応変に攻撃を組み立てる。
 
前半37分 トンガ
SHタクルアが中央やや左、イージーな角度からのPGを狙うも左に外してしまう。
 
前半38分 JPN
ハーフウェイ付近のラックからSH流の左足のキック。一気にトンガゴール前10m。
 
前半終了 SH流の提案は功を奏した。
JPN 21-0 トンガ
 
流)キックでタッチを切り前に出る。みんなもすぐに順応してくれてキックも、ディフェンスもうまくいって結果につながったと思います。
選手が自ら考えて、ゲーム中に修正ができたということだと思います。それは6月の宮崎からずっと合宿を重ねてきて、いい準備ができていたからだと思います。
プランがあっても状況に応じて違うものが必要なら、リーダー陣が提示して選手同士で確認し実行する。それは、ピッチに立っている選手以外でも同じです。
 
ハーフライムでのことを会見で、リーチキャプテンが明かしてくれた。
リ)ハーフタイムに布巻(試合中ウォーターボーイを務める)が「ゲインはしているけれどサポートプレーヤーが遅れている。相手をはがすのが遅れている。抜け出したらスピードを変えて味方を待て」とアドバイスをくれた。
 
流にこのことを尋ねると
流)シュン(布巻)はウォーターボーイで試合に出られないにもかかわらず、チームに貢献したいという思いが強くて、練習から意識高く強度を上げて取り組んでくれていました。みんなをサポートしてくれていて、誇らしいですし、だからこそ出場したメンバーは、より一層やらなければ!という気持ちになれたと思います。
彼を含めて僕と同期はチームに今5人※います。小さいころから知っているメンバーで頼もしいですし、そうやってみんなでここからもチームを作り上げていきたいと思います。                      
※流、布巻、福岡、松島、徳永
 
 
後半トンガのKO開始
 
後半0分 トンガ
PRファアヌヌに代わってタウファが登場。
 
トンガ SOからのコンテストキックを上げプレッシャーをかけつつ陣地獲得を狙うも、JPNがボールを確保し、有効にゲインができない。
 
JPNは敵陣に入るとFWサイドでアタックを繰り返し、相手陣形を崩してBKへ展開。相手のパワーに真向勝負せず、交わしながらゲインを図る。
 
後半7分 トンガ
FLファレアファに代わってカペリが登場。
 
後半8分 JPN
BKに展開するもフォワードパス。パスの精度にかけるシーンが見受けられる。しかし、攻撃のテンポにトンガはついていけずオフサイドの反則。ゴール正面22m田村PG 成功 24-0。
 
後半9分 トンガ
PRフィアに代わって体重155㎏のタメイフナが登場。
JPN SH流 ハーフウェイ付近から今度はボールに回転をかけたハイパント 相手のノックオンを誘う。
 
後半13分 トンガ
交代したFWを軸にパワーで前に出始める。 
 
後半16分 JPN
LOファンデルヴァルトに代わってウベが登場。
 
後半17分 トンガ
ゴール前のモールを押し込んでLOフィフィタがトライ。
タルクア、ゴール成功  24-7。
 
後半18分 JPN 
CTB中村に代わって松田、SH流に代わって茂野が登場。テンポアップを狙う。
一方トンガはしつこく絡んでボールを出せない JPNの反則が連発。
 
後半20分 ウォーターブレイク
トンガ SHタクルアに代わってフコフカが登場。
 
後半24分 JPN
HO堀江に代わって坂手、FL徳永に代わって姫野が登場。
 
後半25分 JPN
相手陣10m付近交代出場のFL姫野が相手ボールをジャッカル、一気に相手ゴール前まで攻め込む。
JPN 連続攻撃でアドバンテージを得るもボールが手につかず
 
後半29分 JPN
田村、正面PGを決める。
 
後半29分 トンガ
LOマフィに代わってバイラヌ、ブナに代わってファイバが登場。
 
後半30分 JPN
PRヴァルアサエリに代えて木津、WTBレメキに代わって福岡が登場。
 
後半32分 JPN
敵陣 右のコーナーに向けてSO田村がグラバーキックでボールを転がすと、WTB松島が外から内へと回り込んでボールをうまく拾いあげるとともに相手を抜き去り、中央にトライ。田村のゴール成功 34-7。
 
後半37分 JPN
PR稲垣に代わって三浦が登場。
 
後半39分 JPN
ハーフウェイ付近で得たペナルティ。タッチに出さず展開。
交代出場のWTB福岡が相手陣5m付近、左タッチライン際でボールを受けるとのスペースがないところを加速。追いすがる相手ディフェンスをハンドオフで次々とかわしトライ。
バックスタンドは大いに盛り上がる。田村ゴール成功 41-7。
 
後半40分 トンガ
PRタウファに代わってファヌヌが登場。
 
試合終了  JPN 41-7 トンガ
 
 
流)ジェイミーHCにいいニュースを届けることだけ思って闘いました。試合終わって、チーム全体のLINEに「よくやった」と連絡が来ました。
 
SH流はゲームプランの変更を提示し、なおかつ利き足の右だけでなく、左足でも正確な陣地を稼ぐキックを披露。チームのリズムを作った。
ミックスゾーンでの取材で記者からキックの精度について聞かれると、「スペースがありましたから、あれぐらいはできないと」とこともなげに語った。
自身に向き合いSHとしての競争に勝ち残らなければならない状況にいる流。高校、大学、トップリーグでキャプテンを務めてきた彼はリーダーシップを備え、もはや風格さえ持つ。
流以外に現在SHとして選ばれているのは、2大会連続出場59キャップの経験値がものをいうベテラン・田中史朗、そして、サンウルブスで覚醒し上り調子の茂野海人。この3人の中で誰が生き残り、本番に出場できるのか。
 
「それぞれが自分の強みを出していけばいいと思う。自分は判断の部分でアピールしていきたいと思っているので、そこについては、今日は力を出せたと思います。」
 
「自分たちが求めているものを、手に入れたわけではないので、ここでの勝利はあくまでもW杯への過程です。ひとつの積み上げとして結果が出たのは素晴らしいですが、W杯で結果を出すことだけを考えています」
 
オーケストラにおける指揮者のごとく、チーム全体を統率し、ハーモニーを引き出すSH。流はまだまだ現状に満足してはいない。W杯でのJAPANでの活躍がますます期待される。
 
【共同記者会見】
≪トンガ≫
ケフHC
「今日の結果は非常に残念です。ラインアウトが失敗でした。前半のキックミスも痛かった。いいところがなかったです。」
 
ピウタウCAP
「試合開始からJPNのスピードを警戒していた。そのスピードをダウンさせようとしたが上手くいかなかった。ミスも多すぎた。学ぶことが多い試合でした。次の試合に活かしていきたいです。」
 
Q:ゲームプランはどの程度実行できたか?
ケフHC
「JPNがセットピースでプレッシャーをかけてきたことで、ディフェンスラインでもプッシュしてきて、やりたいことが出来なかった。学ぶことが多くあったので、次に活かしていきたいです。」
 
Q:この暑さはパフォーマンスに影響したか?
ケフHC 
「サモアでの試合も暑かったが、1週間厳しいトレーニングをしたことは役に立った。」
 
Q:JPNにトンガ出身選手がいることについて
ケフHC
「日本代表になることは素晴らしいことだと思います。素直にうれしいです。若い選手がJPNでもトンガでも立派に成長してくれてファミリーとしてうれしいです。」
 
≪JPN≫
ブラウンHC代行)
「非常にタフなテストマッチでした。しかし、ディフェンスも出来ていたし、チャンスも、活かすこともできて、トライにもつながってよかったと思います。」
リーチCAP
「フィジー戦から1週間の準備のなかで、やろうとしていることがよくできたと思います。先週の反省もクリアできました。ただこの試合のなかで反省点はあって――試合直後なので(細かくは)わからないですけど――ビデオを見て、反省するところは反省し、次のアメリカ戦に向けていい準備をしたいと思います」
 
Q:ゲームプランについて
リーチCAP
「相手のラインアウトにかなりプレッシャーをかけることが出来たので。そしてボールが滑る。そんななか、自分たちの立てたゲームプランを実行できたと思います。」
 
Q:表彰式で、ジョセフHCとお亡くなりになったモードさんの写真を持っていた。きょうのことをどう思って試合に臨んだか。
リーチCAP
「今朝、ジェイミーのお母さんが亡くなったと知ったんですが、このチームのスローガンは『ONE TEAM』。写真を持っていたのは、そのひとつのメッセージです。」
 
Q41-7という点差での勝利。仮想サモアとして得られるものがあった?
ブラウンHC代行
「準備したプランをしっかり実行できたと思います。ボールを動かし圧力をかけました。たくさんのチャンスも作りました。ボールをキープしてアタックを遂行できました。ディフェンスもうまくいき、1週間準部した甲斐がありました。」
 
Q:フィジー代表、トンガ代表という体格の大きな相手に連勝した手応えは?
リーチCAP
「自分たちの自信になっています。4年間でサンウルブズ(スーパーラグビーへ日本から参戦)の経験がかなり活かせていると感じます。毎週、大な相手と戦って、その怖さがどんどんなくなっている。フィジーやトンガも最近の日本代表はかなり強いと感じていると思います。おそらく、日本代表は変わったと感じていると思います」
 
Q:ブレイクダウンでスローダウンさせられていましたが
リーチCAP
「(ウォーターボーイをしていた)布巻がハーフタイムの時にゲインをしてるけど、サポートとの差があると言ってくれました。相手をはがそうとしても遅れていた。フィジーに比べたらサポートが遅れて、ゲインラインやラインブレイクの時に絡まれてしまったので、スピードチェンジをして見方を待つなどした方がいいとアドバイスしてくれました。」
 
Q:昨年6月の対イタリア代表2連戦。初戦で快勝も2戦目で苦しみました。今回は連勝。成長した部分は?
リーチCAP
「今週、それ(イタリア戦の反省)をリーダー陣わかっていましたが、あえて『いい試合の後にもう1度いい試合を』とは言わなかったです。1週間の準備をいつものようにやりましょうと。で、きょう、ブラウンコーチが自分たちに課題を与えました。『いい試合の次にどれだけいい試合ができるか。そこが成長に繋がる』。しっかり応えられたと思います」
 
Q:38歳のトンプソン ルーク選手への評価は?
ブラウンHC代行
「38歳という年齢にもかかわらず、本当に一生懸命練習しています。パフォーマンスはどんどんよくなっていて、びっくりします。代わりのいないオンリーワンな選手だと思います。W杯でも、彼が最高の選手だということを示してほしいです。」
 
Q:試合直前にHC不在となって、影響はありましたか?
リーチ
「監督がいなくても〝勝てる〟のが理想です。選手たち自身で考え、やるべきことを考えるのが理想です。今回はブラウンコーチや長谷川コーチがカバーしてくれましたが、リーダー陣の成長を感じます。今日は本当にそれを感じることが出来ました。」
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